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Precious  memories

 

 

「…自分がもらって嬉しいなあ、ってのを考えて決めればいいんじゃない?」

「欲しいものなぁ…うーん」

「えっと、物じゃなくても、されて嬉しいこととか?
 例えば…肩がこってそうだから揉んであげるとかさ…
 ってナツキは肩凝りとは縁がなさそうだね…」

「どういう意味だ?舞衣…」

胸元を意味ありげに見るルームメイトの舞衣を横目でにらみながら、ナツキは
「されて、嬉しい事…」と呟いた。

 

 

夜半。

 

 

明るかった陽射しは早くに姿を潜め、夜風がせわしなく窓を鳴らしていく。
読書に不自由のない程度にともされた明かりの中で、分厚い参考書を閉じたシズルは
伸びをしながら手元の置き時計を見た。もうすぐ日付が変わろうとしている。

「もうこないな時間・・」

そう呟いて、机上の写真立てに目をやる。
仲間たちの真ん中でぎこちなく微笑む黒髪の少女を愛しげに見つめ、ついと指を滑らせた。

「ナツキは寝たはるんやろなぁ」

長い指がナツキの細い線をなぞる。
指の間を流れる美しい髪。すべらかな頬。長い睫。柔らかくて少し熱い唇…
思いをはせるだけで蘇るナツキの感触。

「ナツキに、会いたいなぁ」

片時も離れたくなくても、恋人同士である以前に2人の関係は「先輩と後輩」
シズルたち上級生のパールと、ナツキたち下級生のコーラルとではそもそも部屋のフロアが違う。
たった一歳の差で、こうして隔てられる事をシズルは本気で呪った。

「…うちも寝よ」

ナツキには明日会えるんやし、と、自分を納得させるのもシズルの日課のひとつだ。
切ないため息をつきながら、寝巻きに着替えようと白い制服に手をかけた瞬間、窓を叩く夜風の音が急に大きくなった。

「明日は寒いんかなぁ・・」

冬場にはよくあることだ。
激しく打つ窓に特に気も留めず着替えを続行しようとした、そのとき。

 

「ばんばんばん!ばんばんばん!ばばばばん!」

 

・・・明らかに不自然な音がした。
自然のものがこんな規則正しいリズムを刻める筈がない。

 

「・・・どちらさんどすか・・?」

シズルは窓の端に立ち、右手を掌底の形に握って構えた。
ローブを纏っていずとも野党数人なら容易く蹴散らせる程度の体術は身に付けている。
しかし、ここはガルデローベだ。
セキュリティ自体も万全だが、常駐しているのは、プロや学生を問わずオトメばかり。
そんな中、誰にも気付かれず忍びこめるような者となると…
背筋を走る緊張を小さな深呼吸でやりすごし、左手でカーテンをつかんで一気に引いた。

 

「ししししししシズル、さささささ寒い中にいいいい入れてくれ」


「…ナツキ!?」

 

あろうことか、窓の外にはコーラルの制服を着たナツキが、ロープでぶら下がっていた。

 

 

「へっくしゅ!」

「あらあら…大丈夫どすか?」

ベッドの上で毛布と掛け布団にくるまりながら震えるナツキに湯気の立つカップを
渡しながら、シズルも隣に腰を降ろした。

「ホンマに、もう…寒かったやろ?とりあえずそれ飲みよし」

うん、と返事をしたナツキは、鼻をすすりながら勧められたミルクティーに口をつけた。

「…うまい」

「ほんま?部屋にはお白湯しかあらへんさかい、即席のんしか作られへんで堪忍なあ」

「でも、凄くうまい」

「そう…おおきに」

隣で布団を被り両手でカップを包んでふうふう飲む幼げな仕草が愛しくて堪らない。
シズルは思わず左手でナツキを抱き寄せた。

「シズル?」

ナツキは驚いたように一瞬だけ身を固くした。

「…まだドキドキしてますわ…
 うちな、さっきまでナツキに会いたいなぁて思てましたんや。
 そない思とったら、ナツキが窓からぶら下がってたやん?
 ホンマにビックリしたんえ?」

くすくす笑いながら、ナツキに頬を寄せる。

「・・・せやけど、ホンマ嬉しい・・・。」

自分の間抜けな姿を後悔しているのか、顔を真っ赤に染めて、怒った様な表情を
浮かべるナツキの耳元にゆっくりと囁きかけ、全身で甘えた。
綺麗、賢い、かっこいい、という大人びたイメージで全生徒から絶大な人気を誇る
シズルが、ナツキにだけ見せる姿。
他の誰も知らないであろう素のシズルを自分だけが知っているという事実に
ナツキは照れくさいような、くすぐったい気持ちになる。
同時に、嬉しいとか幸せだ、とも。


「・・・シズル・・」

「・・ん?なんえ?」

「・・・・本当は、もっとスマートにやるつもりだったんだけど・・」

そっと、シズルの肩を押して、抱き合っていた身体を離した。

「?・・」

驚くシズルに鼻先が触れるくらいずいと顔を寄せる。

「誕生日、おめでとう。シズル」

囁きがふわりとミルクティーの香りを伴って、唇に重なった。
シズルの長い睫毛が驚いたように数回瞬いて、やがて、ゆっくりと伏せられていくのを感じて
ナツキは、その身体をぎゅっと抱きしめた。

「・・・・ナツキ・・」

至近距離で囁かれる吐息の熱さに眩暈がしそうになりながら、ナツキはシズルを
抱き締めたまま言葉を紡いだ。

「・・いままで、誰かの誕生日を祝いたいと思ったことがなかったし、
 何かを贈るにしてもシズルみたいな大人っぽい奴の好みもよく分からない。
 あいつなら、こういう事に詳しいだろうと思って相談したら、舞衣の奴が言ったんだ。
『自分の欲しいものとか、してもらって嬉しいことを考えて決めたら』って。
 欲しいもの・・は別に無いから分からないけど、してもらって嬉しいことなら私でも分かった。」


「してもろて、嬉しい事・・?」


おうむ返しに聞くシズルに、うん、と返事をして、そのままナツキは続けた。


「シズルに触れられると嬉しい、シズルから言葉を貰うと嬉しい。
 お前から与えてもらう事は、全部幸せなんだ。
 シズルも同じ気持ちだったらいいなと思って・・それで・・・
 それで・・お前は人気があるから、学校が始まってからだと他の連中に先を越されそうで・・・
 でも一番に伝えたくて・・・」

ナツキの言うとおり、シズルは学園内で絶大な人気を誇っている。
誕生日ともなれば、お祭り騒ぎのように周囲が祝ってくれる。
しかし、シズルは感謝こそすれど、本当に欲しているわけではなかった。
たった一人で良かったのだと、気が付いた。
ナツキの顔を見て、体温を感じて、その言葉ひとつひとつに酷く満たされる自分がいる。
それは、今まで誰にももらえなかった贈り物だった。

 

「ナツキ・・・おおきに・・・うち・・今まで生きてきた中で最高の誕生日やわ・・」

「大袈裟だな・・まぁ、喜んでもらえたなら私も嬉しいが。しかし・・」

「・・・どないしたん?」

「お前、実際欲しい物って無いのか?」

「ないこともないんやけど・・」

「・・なんだ?言ってみろ」

聞けるものなら聞いてやるぞ?と自信満々に答えるナツキに、シズルはにっこり笑って、言った。

「ナ・ツ・キ。が欲しいわぁ」

「そうか私か・・・・って、はいぃぃぃぃ!?」

「舞衣さんがうつってますえー」

「うるさい!舞衣は関係ないだろう!!だいたい私は欲しい"物"と聞いたんだ。私は物か!?」

「欲しい"者"と違いますん?」

「揚げ足取るな!」

「そないムキにならんでも・・・ほな、ナツキ貰うんは来年にしときます。
それまでに心の準備しとってな?その代わり・・・」

「はぁ・・もう、何だ?」

ナツキはやや疲れた顔で、言ってみろ、と先を促した。

「もっかい、おめでとうのキス、してくれへんやろか?」

「はぁ?!」

「なぁ、あかん?」

色っぽく強請るシズルにやられたのか、真っ赤な顔をして、あぅと呻いていた
ナツキは覚悟を決めたような顔つきで・・・

 


「あ、改めて誕生日、おお、おめでとう」

「おおきに」

「それから、私を選んでくれて、ありがとう・・・それと」

「・・・なんえ?」

「・・・・大好きだ」

 

 

殆ど消え入りそうな声で呟いた愛の言葉は、重なる唇に吸い込まれていった。

 


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遅すぎやろ!感もしなくはないですが、すごいよシズルさん生誕記念です。
今だからバラしますが、本当はエロめな漫画を描く予定で、実際描いて
おりました。しかし、PCのスペック的に重いシゴトが辛い、とか、
私にとって愛を描くのに必ずしもエロは必要ないので、やめました。
最初はもっと「キュン」とするものが出来上がる予定でしたが
消化不良になってしまって申し訳ありません。
SSに至っては何も考えずに書いておりますので、稚拙なのはミエミエです・・
とりあえず「おめでとう」の気持ちだけは込めましたので、ここで魔法の言葉。
「堪忍な♪」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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