And they lived happily ever after  



 風華学園高等部を卒業した私は今、かろうじて合格した大学で、学生生活を送っている。
 2年半舞衣に慣らされたせいか、全くの他人の中でもどうにか人付き合いをこなし、学校にバイトにと、それなりに過ごしている毎日だ。
 私が奇跡的に合格した大学は、先に卒業した静留の通う大学からそう遠くはない場所にあるのだが、もちろん、(受かったのは偶然だとしても)その大学を受けたのは偶然ではない。
 私は、静留との付き合いを念頭に置いて――― そして自分の学力を十分に吟味した上で――― 今の大学を受けたのだ。
 私の合格が決まった後、結局私と静留は、それぞれの大学の丁度真ん中辺りに手頃な物件を見つけ、そこで一緒に暮らし始めた。
 静留が望んだように。そして、今なら私にも分かるが、私が望んだように。
 そんな風に互いに望んだ生活ではあったが、初めはそれなりに大変ではあった。
 今でこそ互いの意図をある程度無言のうちに汲み取れるようになったが、他人との生活に慣れていない私と、言葉をオブラートに包みすぎる静留との間には、何度も苛立たしい時間が流れたものだ。
 苛立ちをぶつける私に、困惑したように静留は笑い、それがまた私の苛立ちを煽り。
 部屋を飛び出したことは数え切れない。
 だが、いつも私は、結局部屋に戻った。
 静留との生活を捨てることが、できなかったのだ。
 その理由に朧気に気付いたのは、春もまだ浅い、あの日のことだった―――



「どうして静留は……っ! もういいっ!!」
 一瞬茫然として、それからカッとして、そのまま部屋を出た私は叩きつけるようにドアを閉めた。

 初めは、ほんの些細なことだった。
 「深夜の通販番組を見るな」「嫌や」という。
 授業が終わった後にバイトを掛け持ちで入れている私にとって、家に帰り着いてからのホッとできる時間は貴重なものだった。
 できれば静かに、ゆっくりとお茶でも飲みながら眠るまでの時間を過ごしたかったのだ。騒がしく商品名を連呼するTVの音声など聞かずに。
 だが、静留の通販番組ウォッチングは、私が何度言っても止まなかった。
「なつき、時々夜中のバイト入れるやろ? 寂しいから夜には帰ってきて欲しい、て、うちが何遍言うたかて聞いてくれへんやないの。第一、そないにお金稼いでどないしはりますの? そんなんしなくても、十分学費も生活も賄えますんやろ? あんまりお金お金言うてはると、強欲ババァ言われますえ」
 口で静留に敵うとは思っていなかったが、反論に継ぐ反論、挙げ句の果てが、これだった。
 私にも非があるのは認める。基本的には昼にバイトを入れているが、時々、どうしても、と頼まれて深夜のシフトに回ることがあるから、そんな時には静留に申し訳なく思う。
 確かに深夜手当は魅力だ。だが、私だって望んで深夜勤務についているわけではない。
 接客業が全滅に終わった今、実入りの良いこの職場を失うわけにはいかない。そのために、職場内での頼まれ事で多少の無理をきくのは当たり前ではないか?
 いまだにあまり得意ではない人付き合いを、どうにかこうにかこなしている私の身にもなって欲しい。
「静留には、その辺が全然分かってないんだっ」
 思わず呟いて、足元の小石を蹴り上げた。
 どこかの塀に当たった音に続いて、金属に当たった音が聞こえる。一瞬青くなりかけたが、急ブレーキの音がしなかったので大事には至らなかったようだ。
 ……ともあれ、ちゃらちゃらと接客だけしていればいい(愛想の良いあいつには似合いだ)静留には、こうした私の苦労はきっと分からないのだ。
 しかも静留の場合、生活のためにしているわけではなく、ただ単に家で私を待っているのが嫌だ、という理由で始めたバイトだ。
 身の入れようも変わってくるだろうことは、容易に想像がつく。
 静留の家には、少なくとも普通以上に金がある。そして静留は、いわゆる『お嬢さん育ち』だ。
 だから本来、バイトなどする必要はない。
 汗水垂らして、苦労を笑顔で飲み込んで、日々勤労に勤しむ私とは立場が違う。
 その違いを理解して欲しい、というのは、私の我が侭だろうか?
 それから静留は、おっとりと……腹の立つほどにおっとりと、最後の爆弾を投げつけてきた。笑顔で。
 「お家賃やなんかはうちが出せるんやから、しゃかりきに働かんとええんどすえ。なつきはもっと悠然として、うちの傍にいて欲しいわ」
 一体私を何だと思っているのか? こんな世迷い言を抜かすとは。私は静留の飼い犬じゃない。
 自分の食い扶持を自分で稼いでこそ、2人の立場は対等で均衡が保たれる。そういうものではないのか。
 あぁ。またムカムカしてきた。
 いかん。冷静にならなければ。
 ……それに、だ。2人でいられる時間が少ないのなら、その状況を踏まえた上で、2人でいられる時間を大切にするべきではないか。
 私のいない夜に深夜番組を慰めにするのは、全然構わない。その結果、妙な器具だとか妙な薬だとか妙な眼鏡だとか妙なペンダントだとか妙な服が増えたとしても、それは静留自身の(主に)懐の問題なのだから、私が文句をつける筋合いではないと思う。
 だが、2人で夜を過ごせる時くらいは、趣味の――― 敢えて言おう――― 『趣味』の深夜帯通販番組ウォッチングをやめてくれたって良さそうなものじゃないか?
 憤懣やるかたない思いで歩を運んでいた私は、ふと足元の道が途切れたことに気付いた。
 顔を上げる。目の前は土手だった。
「川、か?」
 辺りを見回すと、見知らぬ場所だった。どの辺りだかさっぱり分からない。
「上ってみるか……」
 とりあえず高い所に上れば、現在地のヒントくらいはあるだろう。
 枯れ草の中に新しい緑が芽生え始めている土手を上り切ると、眼下に川が見えた。
 土手の高さにしては、流れが細い。それに、川原の部分も多めに取ってある。洪水を防止するためだろうか。
 そう言えば、この辺りはかつて、水害に苦しんだ土地だと聞いたことがある。
 私は振り返ってみた。一体どの辺りなのだろうか。春の陽射しの中で目を細めてみるが、土地勘のない私には、さっぱり分からない。
 肩をすくめて、私は川の方に土手を少し降りた辺りで腰を下ろした。
 川面を渡ってくる風は、怒りにまかせて歩いてきた私の身体に心地良い。
 膝を引き寄せた腕の中に顎を落とし込んで、私は考える。
 当初の予定通りにしていれば、良かったのかもしれない。できれば同じアパートに、無理なら近いアパートに別々に部屋を借りて付き合いを続ける、という。
 だが、それぞれ別に部屋を借りた場合の2人分の家賃を合計すると、それぞれの個室プラス広いリビングダイニング、もちろんバストイレが別々になった、かなりグレードの高い部屋を借りることができると分かって、静留が絶対にその方がいいと言ったのだ。
 それぞれに個室があれば、どうしても顔を合わせたくない時にはそこに篭もればいいし、プライバシーは守れる。それに、2人で暮らした方が何かと経済的だ、と言うのを聞いて、ぐらついていた私はとどめを刺されたのだ。
「自業自得、だな……」
 ため息をつく。
 丸め込まれたわけではないが、狭苦しい場所が苦手な私にとって静留の提案は魅力的だった。
 だからつい、本当につい、うっかりと頷いてしまったのだ。
 私は仰向けになって寝転がった。
 もちろん私だって、それなりの覚悟や決心はしていたつもりだ。
 当たり前だと思っていた生活が壊れた後ずっと1人で暮らしてきて、それからまた、誰かと暮らし始めることが、きっと息苦しく、鬱陶しく感じることもあるだろう、ということは。
 心の中の半分は、私に『やめておけ』と、警告もしていた。
 だが、私は、その警告に従わずに静留との暮らしを選んだのだ。
 もしかしたら私は……あの頃の生活を取り戻したかったのかもしれない。
 格別にワクワクするような毎日だったわけじゃない。嫌なことだって相応にあった。だが、愛され守られていた――― それを当たり前のように受け取って暮らしていた、あの頃を。
 そう思って、私は眉根を寄せた。馬鹿々々しい。取り戻したいなんて、そんなこと、あるわけがないじゃないか。私に限って。
 だが、そう考える私の胸に痛みが走る。心のどこかが、それを正しいと告げていた。
 それでも、それを認めたくない私は勢いよく身体を起こし、手近にある草を無闇にちぎって、辺りに散らしながら呟いた。
「馬鹿々々しい」
 膝を引き寄せて、顔を埋める。
 春の霞んだ空気の中で温かな陽射しに包まれながら、私はほんの少しだけ泣いた。

 ふと気付くと、辺りはうっすらとオレンジ色に染まっていた。
 身体を抱いて、ぶるっと身を震わせる。すっかり冷えていた。
 昼の間は陽射しが温かいが、日が傾くと同時に気温はぐんぐんと下がり始める。まだ、春は本番ではないのだ。
 ジャケットの一枚でもひっつかんでくれば良かった、と後悔するが、今更言っても仕方がない。
 そうこうしているうちにも、日はどんどん傾き、辺りに夕闇が忍び寄ってくる。
 それが無性に寂しくて、心細くて、私は更に身体をぎゅっと抱いた。
――― そうだ。あの時はデュランが迎えにきてくれたんだ。
 迷子になって半べそをかいていた私を、デュランが見つけて、母さんに知らせてくれた。
 それから走ってきた母さんが私をぎゅっと抱きしめてくれて……手をつないで家に帰ったんだ。「なつきちゃんの手、冷たくなっちゃったわね」、と、母さんはずっと私の手を温めてくれたっけ。
 懐かしさと悲しみが湧き上がる。私はもう、その時のホッとした気持ちを、見つけてもらえる幸せを二度と感じることはできないのだ。
 母さんも、デュランも、もういない。いないんだ―――
「こんなとこに、おったん」
 声と共に、肩にジャケットが掛けられた。
 ハッとして振り返る。
「探しましたえ」
「静留……」
「暖かい日やったけど、お日ぃさん沈まはったら急に冷えますなぁ」
 言いながら、静留は私の隣に腰を下ろした。
「どうして……」
「なつき、薄着のまま飛び出したやろ?」
「でも……だけど……」
 うたた寝をして強張ったままの心の内を、同じように強張った口が言葉にできぬうちに、静留は微笑んで答えた。
「なつきが呼んどる気ぃがしたんどす」
「………」
「つい……」
 静留は、眼下を流れる川を見たまま言葉を紡ぐ。
「……つい、意固地になってしもて。いけず言って、堪忍な」
「あ……いや……私の方こそ……」
 目をそらす。そんな私をちらりと見て、小さく笑み混じりにため息をついた静留は言った。
「うちが夜中のバイト嫌がるんは、なにも寂しいから、て理由だけやないんどす」
「じゃあ……?」
「なつき、すぐ根詰めはるやろ。夜にそないに一所懸命働かはったら、学校でも居眠りばかりやありません?」
「あ……」
 図星だった。
 授業の後バイトをして、その後に別口の夜のバイトが入ると、ほとんど寝る時間はない。
 授業前に2時間寝られれば良い方で、下手をすると一睡もできないのだから、授業中、特に午後の授業は気付かないうちに寝入っていることも度々だった。
「何事も一所懸命やるのはええことどす。せやけど、身体壊してまですることでもあらへんやろ?」
 顔を覗き込むように言われて、私は顔が赤くなるのを感じた。
 いつもいつも、どうしてこう静留は、反論の余地のない正論を言うんだ。
「勉強かてあるんやし、バイト、ひとつ減らした方がええと思うんよ。そのくらいは、うちがバイトしてカバーできるんやし……。ひとりでなんもかんも抱えて、うちにはなんも手伝わせてくれへんの、水臭いわ」
 いつもいつも、どうしてこう、静留は……
「考えて……みる」
 私は肩に掛けられたジャケットをぎゅっと引っ張って、小さく縮こまりながら答えた。
 静留が立ち上がる。ぽんぽんとお尻をはたいて、私に手を差し出した。
「そろそろ帰りましょうか」
 頷いて、私はその手につかまって立ち上がった。
「冷たい手ぇやねえ」
 静留は驚いたように言って、私の背中から枯れ草をはたき落とした。私の冷たい手を、ぎゅっと握ったままで。
「早よう帰ってお風呂入らんと。寝込んだりしたらえらいことどすえ」
「静留……」
 踵を返して私の手を引く静留を、小さな声で呼んでみる。
「なに?」
 振り向いた静留の顔が夕焼けに染まっていて。
「もし寝込んだら、静留が看病してくれるんだろう?」
 だからきっと、自分の顔も同じ色に染まっているだろうことを、私は期待する。
 一瞬きょとんとして、それから静留は破顔して言った。
「それやったら、冷たい身体温めるんも、任せてもろてもええんどすえ?」
 多分その時の、真っ赤になった私の顔色も、夕焼け色に紛れて見えなかったことだろう。……そう、願いたい。

 その後、結局静留の言葉通りに事が運んだことは、言うまでもないだろう。
 私は寝込むことも、くしゃみひとつすることもなく、済んだのだ。
 そして、その晩。
 真夜中過ぎに、私はふと目を覚ました。
 眠気の残る頭で、何故目が覚めてしまったのか、とぼんやり考える。
 ふと、気がついた。身体を捻る。
 カーテンを開けっ放しにしたままの窓から、青白い月明かりが差し込んでいる。
 今夜は満月なのか、窓の形にくっきりと切り取られた光が眩しくて目が覚めてしまったのだ。
 理由に納得して、枕に頭を落ち着かせた。
 気絶するように眠り込む直前までの行為の名残のように、乱れた髪のままの静留は薄く唇を開いて寝息を立てている。
 疲れたのだろう。
 こんなに明るい光に照らされているというのに、一向に目を覚ます気配がない。
 月の光が、静留の顔に深い陰影を与えている。私はその境目に指を滑らせた。
 乱れて頬にかかった髪をそっと除ける。
 不意に、心臓がトクリと音を立てた。つられるように、顔が熱くなってくる。
 青白く染まった静留の胸が上下し、口元からは小さな寝息が漏れる。その姿から目が離せなくなった。
 見慣れている姿だというのに、胸がきゅうっと痛くなる。
 そして気付いたのだ。私は静留を、





「何してはるん?」
 肩口からひょいっと覗き込んだ静留が、私の前に置かれた紙の束を掠った。
「あ……っ! それはっ!」
「共有スペースでしてるんが悪い。知られたなかったら、自分の部屋でしたらええのに」
「クーラーのない部屋でなんて、暑くてやってられるか」
「なになに、『風華学園高等部を卒業した私は今、』……ふうん? 日記やの? 珍しいなぁ。なつきがこういうの書かはるんは」
 喋りながらも私の手を優雅に避け続けた静留に、私は奪還を諦めて胡座をかいた。
 静留は立ったまま、黙々と紙を捲り続ける。最後の一枚まできて、顔を上げた。
「それで?」
「で?」
「『私は静留を、』なんやの?」
 悪戯っぽい目でからかうように静留は言った。
 私が答えられない、と思っているのだろう。そういう時の私をからかうのが、静留は好きだ。
 だが、私は静留を見上げて、そこに書かれるはずの言葉を口にした。
「『私は静留を、愛しているんだ、ということに』」
 それを聞いた静留はわずかにたじろぐ。そしてそれから、目元を潤ませた。
 私は目を細めて笑みを浮かべる。
 あぁ、やっぱり私は、静留を愛している、と思いながら。
 そのことが、とても幸せだ、と思いながら。
 満足感にひとつ小さなため息をついて、私は口を開いた。
「明日、父さんに会ってこようと思う」
「……!!」
「気付いたんだ。過去に……すでに壊れてしまったものにいつまでも恨みを抱いていても仕方ないと。父さんがあの頃の私の全てを根こそぎ奪って壊したのは確かだが、私はあの頃とはもう違う。自分の力で新しく作り上げることもできるんだ。それに気付いたら、もう父さんを恨んでいても仕方ないんじゃないか、それどころか、父さんを恨み続けることは、かえって邪魔になるんじゃないか、と。だから……」
「なつき……」
「ずっと怖かった。父さんに会って、また背を向けられたら、と思うと。だが、お前が……静留がいてくれた……いてくれるから。だから私は……。ありがとう、静留」
「後悔、せえへん?」
「あぁ。何があっても、な」
 それから少しだけ恥ずかしい気がして、私は目をそらして続けた。
「今までの自分とは決別しようと思って、書いたんだ。母さんが死んだ時からのことを、全部。書き終わったら父さんに会って今までのことを精算するつもりで。それで今日書き終わりそうだと思ったから、明日、会う約束を取り付けた。……私は、自分で思っているほど器用じゃないんだ。父さんを乗り越えなければ、静留とは、きっとやっていけ……」
 不意に、ふわりと抱かれた。
「静留……っ」
「うちは……うちはいつかてなつきのことだけ想てます。なつきがどんなでも、それだけはずっと変わらん気持ちどす。せやから無理は……」
「無理なんかしていない」
 私は静留を引き剥がして笑いかけた。
「無理なんかじゃ、ない。静留がいるから、こうしたい。静留とずっと生きていくのに、私の中にある父さんへの気持ちは邪魔なんだ。私は……静留、お前と2人で幸せになりたいから」
 静留が息を呑む。それから泣き笑いのような表情をして言った。
「なつき……。嬉……しい」
 口元を手で覆った静留の目から、ついにはぽろぽろと涙が落ちる。
 綺麗な泣き顔だ、と思った。
 ずっと見ていたいほど、綺麗な泣き顔だ、と。
「それに、現実的な話もあるし、な」
 しばらく静留の泣き顔に見とれていた私の言葉に、ようやく涙を拭いた静留が首を傾げる。
「仕送りは、もう必要ない、と言うつもりなんだ。学費の残りはきっちり振り込んでもらうつもりだが、それでもう、この気持ちにケリをつけたい」
「!! それでバイトを!」
 ハッとした静留に、私は頷いた。
「自分の力で作り上げたいんだ。お前との生活も、自分の人生も」
「……そうやったの」
「言わないで、すまなかったな。全部終わってから言うつもりだったんだ」
 私が頭を下げると、静留は微笑んだ。
「ええんよ。せやけど、ひとつだけ言わしてもろてええ?」
「なんだ?」
「うちとなつきの生活は、2人で作り上げていくもんどす。なつき1人で作れるもんやありませんえ」
「あ……すまない。……そうだな、私だけでは駄目だ。静留がいてくれなければ……」
「そうどすえ」
「……なぁ、静留」
「なんどす?」
「私達は、幸せでいることが当たり前の毎日を作れるだろうか?」
 ふと思い出した、春の日溜まりのような温かさ。
 あの幸せが手の届かぬものになってしまったと思ってから久しい。
 だが、もしももう一度それを手に入れることができるのなら……
 静留は、私の問いにこう答えた。
「そうやねぇ……。なつきがうちを愛してくれはるだけで、うちは幸せやけど……。なつきは?」
 私も、少し考えて答えた。
「私も……静留が傍にいてくれれば、幸せだ」
「それやったら、うちらにとって幸せでいることは、もう当たり前のこと違います?」
 静留の、反論の余地のない正論に、私達は満面の笑みを交わし合った。

 

 


Author:ミッションスクール系スベスベマンジュウガニさん

    作品の無断転載は絶対禁止です。
    管理人の感想は「イメージ画」のところに載せています。

 

 

 

 

 

 

 

 

 



広告 [PR]スキンケア  転職 化粧品 無料 ライブチャット